彼の旅は続く
「ラストプレイ」語り続けています。
青樹君の代役は星条さんですね。頑張れ!!青樹君、心配です・・・。
ラスプレは確かに特別な事件は起こらない話で、そういう意味では非日常的ではない話。
魔法もなければ、戦争もなく、革命もなく、多少のドンパチはあるけれど(笑)、あまり自分から遠いところにある話ではないと思う。
別に戦争に命をかけなくても、魔法が使えなくても、銃が使えなくても、そういう主人公っていてもいいと思う。
でもヅカの主役では意外と少ないタイプで。
でも、自分に近いからこそ、あの終わり方は活きているのだと思います。
以下ネタバレあり。
■ラストプレイの最後、アリステアはピアノに対するトラウマを克服し、一人歩き出し旅立っていきます。
劇の終わりは、アリステアにとっての新たな始まりで。
芝居の冒頭でも「新たな始まり」だと彼は歌っているけれど、本当の意味で、彼が自分のための人生を始めるのは終幕なんですよね。だから冒頭のあの歌は、どこか暗い影を感じます。
終幕の歌はその暗い影がすっと消えて、温かいものを感じるんですよね。
アリステアがプロのピアニストになってあの話が終わったら、「ラストプレイ」という話自体の意味がなくなってしまうんですよね。彼が迷いながらも、自分が進むべき道を周りの人との関わりあいから見つけていく物語なので、決してサクセスストーリーが描きたかったわけじゃないんですよね。
そこがわかるかわからないかで、この話って見え方が違うんだろうなと思います。
アリステアが終幕からその先に進む道は、たぶん平坦なものではなく、もっといろいろある道だと思います。
だからこそ、彼はこの物語を通して得たことを胸に、その楽なだけではない道を一人で歩くことを決意し、そしてこれからは歩んでいくんだろうと思うのです。
彼はムーアたちのいる世界にとどまる楽な道は選ばなかったわけですし。
アリステアの未来が本当にプロのピアニストへ繋がっているかはわからないです。でも、もしかしたら彼はアメリカへ渡ってジャズピアニストになっていたり・・・とか、それともどこかの教会のピアノ弾きになっているかもしれない・・とか、いろいろ想像が膨らむんですよね。そのいくつもの可能性に満ちているところが、あのラストシーンのステキなところだと思います。
前にアリステアという存在があのムーアたちのいる世界では異色で・・・ハードボイルドの世界に迷い込んでしまった普通の現実の青年のお話だと語りましたが、主人公が異世界へ迷い込むことで、もといた世界での居場所を見つけ出す話はけっこうよくある話なんですよ(笑)。結果的には違うけれど、「夢の浮橋」も祭りという異世界へ迷い込むことで本当の自分を認識してしまうという部分もありましたし。
なので、あの終わり方以上のものはないな・・と私は思うのです。
■アリステアというキャラについて思うことはいろいろあるのでしょうが、孤児院にいたときにピアノの才能を見出され、それで特別扱いされていたのに、ピアノが弾けなくなってしまったらそういうものをすべて失ってしまった・・。ここでアリステアは、孤児院の・・院長の名誉のために・・と言っていましたが、そういうところがふつうに家族の中で育った人がピアノをやることと全く意味合いが違うんですよね。
アリステアにとっては世界のすべては「孤児院」だけだったんですよね。
ピアノを失うことは、彼が生きてきた世界で居場所を失うこととイコールだったわけで。
アリステア自身は孤児院にいるときに、ピアノを好きだから弾きたいとか、嫌いだから弾きたくないとかそういう選択の余地はまったくなかったと思うんです。
そういうことは考えることが許されない・・・。
そこはすごくわかるな・・と。
仕事している人ならわかる感覚かと。好き嫌い関係なく仕事はやらなければその世界で生きていけないわけですし、上司の期待とか、いろいろあると思いますし。
アリステアにとっては「孤児院」という会社で「ピアノ」という仕事をしていたと考えれば、自分はすごくよくわかりました(笑)。
だからこそ、弾けなくなって、ピアノが弾けなくても生きていける世界に出て、そこで初めてやっと彼自身がピアノを愛していることに気付けるんですよね。
ムーアに「死ぬわけでもない、甘えるんじゃない」って言われてましたが、それでも、孤児院が世界のすべてだったころ、ピアノのためにその世界での居場所を失ったのは、孤児院では生きられない=死と同じぐらいの意味を持っていたのではないかと。
また記憶を失った状態でしかピアノが弾けない。
記憶を失う=本来の自分の死でもあると考えれば、彼はピアノのために二度死んでいるんですよね。
アリステアにとっての死とムーアにとっての死ははっきりと違っていて・・・。
確かに、そういうトラウマがわからない人からすれば、命を失う死より怖いものなんてないから、そんなトラウマ・・と思うかもしれないし、その気持ちもわかる。
でも、命よりも「自分が自分であること」のほうを大切に思うなら、それを失うことのほうが命を失うことより遥かに恐ろしいのではないかと思うんです。
そういう価値観の違いですよね。
私達だって「死ぬ気になれば何でも出来る」って思っていても、実際にそういうことって出来ないし(笑)、命を失う前に自分が自分であることを失ったり世界での居場所をなくしたら・・やっぱり怖いと思うんですよね。
なんか上手く言えないんですが。
自分は、あのあたりはうじうじしているのかもしれないけれど(笑)、アリステアの気持ちは痛いほどよくわかるな・・と思います。
自分に近い物語だと思って見るとけっこういろいろ面白い要素があります。
私はもちろん非現実でスペクタクルな舞台も好きだけど、こういう大げさでない特に大きな事件の起こらない芝居も好きです。映画でもそういう映画は好きだったりしますし。
作品の根底に流れているものが好きだから、「ラストプレイ」は好きです。
根底に流れているものは、たぶん「人情」なんでしょうね(笑)。
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